細木ユニティ病院における学際的多職種連携


べテイS.フルタ 川崎医療福祉大学保健看護学科教授
2000年4月17日 於:細木ユニティ病院6階



◆はじめに◆
 高坂先生をはじめ、温かい歓迎のお言葉とご紹介をいただきましてありがとうございます。
私にとって、1995年に来日して以来3度目の高知訪問となりますが、このように細木ユニティ病院へ招かれたことを大変嬉しく思います。残念ながら私の日本語は講演するには無理がありますので、谷岡先生が通訳をしてくださいます。また、後の質疑応答の時間には臨床心理士の木戸さんが通訳してくださるということで、おニ人に感謝いたします。
 これからは英語でお話しさせていただくことをお許しください。

 「なぜ、アメリカ人の看護学教員が学際的多職種連携について講演するのか」と皆さんは不思議に思っていらっしゃるかも知れません。その手短な答えは細木ユニティ病院が学際的な多職種連携、また簡単にチームワークとも呼ばれますが、そのパイロット研究の臨床現場として選ばれたということです。

 しかし、もう少し全体的な経過をたどってお話ししますと、おそらく、皆さんの多くの方がすでにご存じの通り、2カ月前に日本のさまざまな機関から、5名のメンバーがアメリカのアンアーバー市にありますミシガン大学へ学際的な精神料ケアの実際を視察するために訪問してまいりました。視察グループは、精神医学、看護学、臨床心理士学、そして社会福祉学を代表する臨床家と研究者から構成されていました。出発以前から、視察チームは日本とアメリカにおける精神科医療において社会文化的な相違があることを踏まえておりましたが、チームの大きな目標はそれぞれの分野の専門職がいかにして患者のアセスメントを行い、ケアプランを立て、治療を遂行し、その効果を見極めて協力しているのか、ということを知ることでした。特にポイントにして挙げますと次のような点です。

  1) 精神科患者ケアにおいて、各専門職の役割および機能は何か。
  2) 学際的な多職種連携とその遂行を助成する特徴は何か。
  3) 何を、いつ、どこで、どのようにして患者のケアについて各専門職は決定しているか。

そして、今日の講演では次の4点を明らかにしてみようと考えています。

  1) 学際的多職種連携を定義し、それを維持し助成する要素を述べる。
  2) 連携において看識者がもちがちな態度を推測し、明らかにする。
  3) 慢性期患者の継続的な治療のケースを用いて、学際的多職種連携の例を提示する。
  4) 最後に、一般的に観察される懐疑的態度、つまり変化に対する抵抗を検討し考察してみる。

 ミシガン大学で行われた視察に加えて、細木ユニティ病院から頂いた、病院と高知県に関する患者人口の統計に、関連の文献から得た知識と私の経験を交えていきたいと思います。
 時折、質問を投げかけることで、答えを皆さんに考えていただくことにもなるでしょう。ただし、私が精神料の看護婦であり、基本的に看護スタッフに向けて話をしているということを忘れないで頂きたいと思います。



◆精神疾患に関するデータ◆
 まず、高知県における精神疾患の実際について少々触れることから始めましょう。頂いた情報は、細木ユニティ病院を最新として1988年から現在までのデータが示されています。その報告は次のような冒頭文で始まっています「精神疾患は一般的な病気です。高知県民の1.3%の人が精神科での治療を受けています。」(細木ユニティ病院資料p3)。そして県内の入院患者数は約4,000人そして通院患者数は8,000人です。この数はうつ病やそのほか人格障害など、精神科以外の診療科で投薬を受けている患者の数は含まれていません。含めるとすれば合計数は増大することでしょう。

 高知県では、人口10,000人に対して48.1人の患者の割合に50.5床が存在することになります。しかし、日本の全国平均は人口10,000人に対して28.3人の患者の割合に29.1床が存在します。高知県の人院患者においては、その58.2%が3年以上の入院を経験し、32.6%が10年以上の入院をしています。ここ細木ユニティ病院では215床に対し1日在院平均患者数は180人で、平均在院日数は205日となっています(1999年度)。

 様々な研究認査は入院治療が最もコストの高い治療法であることを明らかにしています。細木ユニティ病院が在院口数を短縮することによって、患者ケアの質の維持に努めているのは不思議ではありません。



◆学際的多職種連携の導入とその理由◆
 ウェブスター辞典では『連携共働/コラボレーション(collaboration)』という言葉の意味を2人、または決まったメンバーでひとつのプロジェクトに共に協力して取り組む、と定義しています。
また『学院/インターディサプリン(inter-discipline)』とは分野の異なる2学問、もしくはそれ以上の学問が参加し、共同することを意味すると示しています。つまり、私たちにとって『学際的多職種連携』とは、それぞれの学問が精神保健の専門職として一つのプロジェクトに取り組むということです。そうすると、そのプロジェクトとは一体何なのでしょうか。

 私たちのパイロット研究の主な目的は、学際的多職種連携を行うことでホスピタリズムと入院治療を減少させようというものです。その解決法の一つは、関連文献や実際に学際的多職種連携を導入しているミシガン大学への視察に見し、出されるかもしれません。そして患者にとっての利益とは、質の高いケア、死亡率の減少、生活の質の向上、そしてコストの削減などを提供することで還元されます。(Akhavain,Amaral,Murphy,Uehlin-ger;UniversityofMichigan)

 学際的多職種連携の患者ケアは、アメリカ社会や精神科ケアにおいて伝統的な医学モデルを超えて広く普及し、また日本でもそうありつつあることは興味深い点として記しておきたいと思います。毎年、アメリカ精神医学協会(APA)は学際的多職種連携の模範的功績に対して学会費を授与しています。州(県)立の精神保健局や、大学の中心的4分野の学間(看護学、精神医学、心理字、社会福祉学)そしてユーザーの人々との共働連携をとおして、精神疾患患者のケアの向上に際立った功績をあげた節例の名誉を替えるものです。(Bondurant)。

 細木ユニテイ病院のパイロットプロジェクトは発展的なものとなるでしょう。つまり、多くの疑問に対する答えは、研究プロジェクトの過程を経て見い出されることになるからです。そして、その日本文化の中で学際的多職種連携のチームワークの発展を促す答えを見し、出すには皆さんの協力が必要です。皆さんに教えて欲しいことは、学際的多職種連携で何が大切なのか、また何がさほど大切ではないのか、生じる問題とは何なのか、看護スタッフ自身が変えて行かなくてはならないことは何なのか、そして最も重要なこととして患者ケアの効果とそのコストはどうなのかです。



◆看護スタッフと共働連携について◆
 ここで看護スタッフについて考えてみますが、特に、多職種連携に関連して精神科看護スタッフについて、私が思うところを述べてみます。

1,  看護スタッフは1日24時間、1年365日の入院患者に対する責任を担っています。その他の職種も精神料ケアでそれぞれ役割を担っているのですが、患者の症状変化などを含めた日常生活の情報は、看護スタッフの報告に頼っています。
 多職種の適切で迅速な介入のために、どのような質の患者情報を看護スタッフは提供しているでしょうか。情報共有の方法について学際的多職種連携での討議は必要でしょうか。患者のアセスメントや社会復帰へのの援助のために看護スタッフは的確な情報提供をしているでしょうか。

2,  精神料看護スタッフの間に存在する教育レベル、経験、そして力量の変差は、内輪の競争や対立を生じる可能性があります。
 まず第一に、多職種の誰と、何を、いつ、誰のために連携するのかという以前に、看護スタッフ同士が自らの役割と機能を明確し、一致しておかなければならない、ということではないでしょうか。

3,  看護スタッフは多職種のメンバーと同等として参加することを学んでい<必要があります。
 学際的グループにおいて、看護スタッフは率いるよりもむしろ従うのが典型的で、医師がその場にいるときなどは特にです。同等のパートナーとして学際的多職種連携の交流をはかり、そして適切な時点に主導権を持つようになるためには、どのように看護スタッフは訓練し、互いに活動を高めていけばよいのでしょう。



◆共働連携の特徴◆
 次に、臨床現場において共働連携とチームワークを助成し成功させる特徴とはどのようなものでしょうか。
 これから挙げる点、簡単に見えて実は難しい点が考えられます。   (Akhavain,Amaral,Murphy,Cardone-Uehlinger;BeVarly,Dobson,Atkinson,Caldwell)。

▼信頼と相互の尊重▼

 共働連携は、それぞれの専門分野の間の信頼度が高いときに成功します。信頼とは肯定的に他者の能力を信じて頼り、そして、その人の行動が正しく、倫理的動機に基づいていると確信することを意味します。つまり個々が知識優越の階級的組織、また日本においては、年功序列の古い概念を放棄しなくてはなりません。
 チームメンバーの相互意見への信頼と尊重が、チームの文化様式(本質)の一部となれば、患者ケアの責任を引き受けやすくなるのです。つまり必要不可欠なことは、チームメンバーの1人1人が自己の役割と責任を認識すると同時に、他のメンバーの役割と責任を理解することなのです。

 ここで質問でいたします。信頼と正しく評価された感覚は細木ユニティ病院にありますか。

 皆さん、専門職としての役割と焦点は明確ですか。もし、明確でないのならば、強力なチームワークを発展させるために、どのようにして役割を明確にし、信頼を築きあげていけばよいのでしょうか。


▼役割の柔軟性▼

 それぞれの専門職の役割が明確にされ、他のメンバーがそれを理解すると、仕事の責任をオーバーラップして共有できるようになります。
 例を挙げると、アンアーバーでは家族ミーティングは伝統的に社会福祉士が行っていました。時には、精神科看護スタッフ、特に臨床看護スペシャリストがこのようなミーティングを行っていました。それは大学院の教育で家族と集団を取り扱えるように訓練を受けますし、臨床看護学の範疇に含まれるからです。もちろん、臨床心理士もさまざまなサイコソーシャルな心理療法の訓練を受けています。知識の共有とメンバー同士での経験を通して生れる役割の柔軟性は、共働連携のプロセスに豊かさを増します。

 ここで質問です。こういった柔軟性のある仕事はどのようなものでしょうか。また多職種とオーバーラップできる柔軟性のある職種は何でしょうか。どの職種が、何に関して柔軟性があるでしょう。


▼役割の増大▼

 学際的多職種連携の相互作用による成果は、メンバーの自信、価値ある存在感、そして患者ケアに対応すべく力量の向上に現わされます(UniversityofMichigan)。
 そして今までに述べてきた専門職に加えて、治療的に関与している専門職は作業療法士、薬物依存カウンセラー、芸術や音楽療法家、レクレーション専門家、栄養士、など含めて他にもあります。多くの学問分野の職種が一緒に活動すると、もっと包括的なケアプランが展開されるのです。

ここで質問です。連携チームにもっと多くの職種に参加してもらう可能性はどうでしようか?


▼接近の距離▼

 異なった専門職から信頼を得て、信頼関係を築きあげていくには、定期的にやり取りをする必要があります。職場が近いことや同じ病棟で定期的に姿を見ることは信頼関係を促進させます。(UniversityofMichigan)

 質問です。共働連携しようとする人達は定期的に会って一緒に活動していますか。でなければ、そうするためにもプロジェクトに参加してもらい課題を担ってもらうことは可能でしょうか。


▼コミュニケーション▼

 コミュニケーションは人間関係と、関係のシステムの土台となります。共働連携する仲間同士の適切なコミュニケーションとは、非防衛的(非反発的)、スムーズで適切な意見交換、率直で相互関係があるといるのがその特徴です。こういった態度は西洋文化においては白信と信頼の高さに現われます。しかし、日本での適切なコミュニケーションとは非直接的態度で社会的規範に沿って鑑みなくてはなりません。

 質問です。細木ユニティ病院ではすでに適切なコミュニケーションはとれていますか。もしくは改善の必要はありますか。他の専門職との関係は困難で、対人的なストレスに耐えられるでしょうか。



◆継続的治療サービス◆
 学際的多職種連携がどのようにして思考への継続的治療サービスに役立つのか考えてみましょう。状態が悪化した際に、患者はいくつかのサービスを利用することになります。例えば、入院して病棟のサービスを受ける、またはデイケアのサービスを受ける、または通院治療のサービスを受けるといったものです。(ちなみにデイケアは「精神科部分的入院加療」とも呼ばれます。)

 入院病棟は任意入院もしくは医療保護入院の患者のために提供され、24時間の集中加療は、診断を目的とた範囲の広い医学的、心理学的評価のサービスが受けられます。看護スタッフも自殺傾向のある患者には命の安全を提供し、身体の看護を要する患者にはその必要を満たし、一人一人とかかわり、環境療法に加えて集団と教育療法などを提供します。

 次の段階のケアはデイケアにて提供されます。デイケアは集中したデイプログラムで、自宅での自己管理は可能なしベルまで回復したものの、病前の機能にまでいたっていない患者に、個人と集団に環境療法を用意しています。一般にデイケアとは、入院患者へのサービスと同じ意味の治療を、今度は場所を変えて提供するものです。患者は自然な地域社会での生活を続けながら見守られていきます。通院療法のサービスはケアの介入が最も軽いものです。薬物療法、依存症カウンセリング、技能訓練、個人カウンセリング、長期の集団療法などの含め、患者が地域社会で生活が営めるように援助します。外来の患者は一週間に一度の通院、もしくは調整しながらのスケジュールが組まれます。

 細木ユニティ病院では、整った治療サービスの提供がされていると理解していますが、ここで私がここまで述べてきた内容と比較して見ましよう。病棟は5病棟(U1病棟[慢性期、開放]、U2A病棟[急性、閉鎖]、U2N病棟[急性、開放]、U3R[慢性、内科加療、開放]、U3D[老人、機能性脳障害、閉鎖]、U5病棟[慢性、おもに分裂病、閉鎖])となっています。また別に独立したサービスとして、患者に提供されているものを挙げてみましょう。入院患者の活動のために作業療法棟が設けられ、そして作業療法と同じ機能をもつデイケアセンターは外来の患者に設置されています。臨床心理学のサービスは心理検査と個別カウンセリングや集団カウンセリングで、精神保健福祉士は患者の家族と社会的問題へのサービス提供と必要書類を処理する業務があります。

 細木ユニティ病院には、学際的多職種連携を実施するのに十分な範囲のサービスが整っているのは明らかです。しかし、各専門職が認識する任務と使命は、細木ユニティ病院における患者ケアに十分に取り入れて活用されていないように思われます。

 私はセルフケア看護を支持する者ですが、例えば、看護とは行き届いた管理や快適なケアを提供するだけではなく、治療的な目的をもつ病棟環境をそれぞれの患者の看護計画に取り入れ創意工夫することにあります。すべての病棟看護スタッフは患者の状態を把握し、次に何をすればセルフケアの改善につながるのか理解していますか。看護の範囲ではないですが、一つ例を挙げてみます。私が理解するところによると、作業療法は患者に活動や行事に加えて、さまざまな手工芸を提供しています。何が欠けているのか、それは社会での仕事につながるような、職能と自信を育てる構造化されたプログラムのようです。

 ここで質問です。それぞれの専門職は自らの精神科ケアにおける目標を再確認し、そこに立ち返る必要はないのでしょうか。すでにサービス提供ができている専門職が、患者の可能な限り自立したセルフケア能力を高め、それに焦点を合わせたプログラムに取り組むためには、どのように連携していけばよいのでしょうか。




◆継続的ケアのための学際的多職種連携症例紹介◆
 皆さんの状況に必ずしも当てはまるものではないでしょうが、学際的多職種連携の症例を仮定して、慢性的な疾患をもつ患者のための継続的なケアを考えてみます。仮に患者さんを田中さんと呼びます。35歳の独身男性、高卒、双極性気分障害の症状悪化をきたしています。これまでの数年間は安定し、生活能力もかなり維持できたのですがパラノイア傾向が強くなりました。連続飲酒に再び陥り、見当識を失い自滅的になっています。

 田中さんの外来主治医は集中的な治療が必要であるとし、デイケアのケースマネージャーでもある看護婦に連絡を取りました。デイケアの治療チームは田中さんについてアセスメントを行い、主治医と意見が一致しました。田中さんはもっと集中した治療が必要であるが、24時間の入院は必要ないと判断されました。デイケアに参加する際の初期面接で社会福祉士は見当識の乏しい行動を観察し、参加申込票の記入を手伝うこととなり、これらの観察事項はチームのメンバーにも伝えられました。投薬の調整、そして薬物の効果を観察することによって、田中さんの精神症状を安定させることがデイケアの目標で、これには彼の薬物療法へのコンブライアンスも含まれています。アルコール乱用に関しては、12ステッププログラムのAA断酒会(AlcoholicsAnonymous)ミーティングに毎週3回の出席が義務づけられました。

 デイケアに参加して3週間が経ち、田中さんの状態は安定してきました。この間、田中さんが他の人に援助を求めることが困難であるに気付き、複数の専門職が行っているSST(SocialSkillsTraining)のグループへ参加を勧めます。断酒も続き、家族や友人からも必要なときに援助を求めることができるようになりました。田中さんは外来の主治医にもどり、薬物乱用の治療グループへ定期的に出席しました。この先数年は安定を続け、断酒も続き、自動車整備士として勤務することになります。

 田中さんは、再びアルコールに溺れるほどのストレス(妹の急死、新居購入)を体験しデイケアを訪れました。パラノイド傾向は強まり、抑うつ状態になり自殺念慮が増してきました。田中さんは学際的多職種連携チームが作成した自殺予防を目的とした安全のための契約に署名しました。これは自殺念慮が増してきた時にはスタッフに伝える、と患者が文書で約束し署名するものです。しかしその週末、女性友達と口論になり多量服薬し自殺を計りました。救急医療に運ばれ、精神料病棟への入院となりました。病棟の学際的多職種連携チームは田中さんのケースに関して次の2点の問題に焦点をしぼりました 1)急性な自殺行為、それと同時に、2)適切な退院計画

 田中さんはセルフケアが可能な段階にまでなり、自滅的ではなくなった時点で再びデイケアが導入されます。入院期間中に、デイケアと病棟の看護スタッフと作業療法士が、田中さんの状態についてデイケアのスタッフに説明を行います。これは患者がデイケアに参加する前に、どのような経緯を経ているのかを事前に理解するのに役立ちます。

 今回、デイケアチームは田中さんの抑うつ状態を安定させることに焦点をあわせます。妹の死をめぐって長期にわたる喪の作業に特に注意しながら、他者との社会的交流を促し、Mへの参加を援助しつつ、そして、もとの仕事に復帰できるまでの自立機能を徐々に助成していきます。田中さんは1カ月でこれらの目標を達成しました。これまで長らくかかわってきた外来の主治医にもどされ、外来治療を継続しています。

 看護スタッフや他チームメンバーは多職種による共働連携を通して、患者、治療プログラムの質、また加えて専門職のチームメンバーにとって有益であると認めていることが研究調査の文献によって明らかにされています。スタッフが経験する肯定的な成果とは、コミュニケーションの改善、情報共有の拡大、専門職として、また個人としての成長などです。そしてまた、専門領域間に存在していた伝統的な境界線を捨て、縄張り意識や態度から開放され、お互いの専門的知識と経験、識見や学識を共有することで、より太きな共働連携の感覚が生れるのです(Akhavain)。



◆学際的多職種連携についての懐疑◆

 学際的多職種連携については懐疑的な人がいるであろうことは予想されます。その懐疑は学際的多職種連携の概念そのものに関するものと思われます。また細木ユニティ病院で学際的多職種連携がうまくいくはずはない、と疑っている方も居られることでしょう。ここに挙げる表現がそのような疑惑を表わしているかもしれません。

1,   「前にもこのアイデアは聞いたが、うまくはいかない」
 色々な懐疑のうちでもこれが一番代表的なものです。
 私は現実主義の一人ですが、また経歴40年の精神科看護婦です。精神科を含めて病院というところは、その可変性を知られていません(変われるのに変わらないことで有名の意味)。もっと良い方法があるにもかかわらず、今までの方が居心地がいいのです。しかし、素晴らしい変化を遂げたい<つもの例や、新しい概念を精神科治療システムに取り入れた病院を、長い経験を通して見てきています。
 十分な時間、努力、質源そして目標が明確に理解されていれば、看護スタッフは変化できるのです。問題解決志向で実際的、具体的方法を見つけ出すように、私達は活動をしましょう。

2,  「医師が指示するのだから、何をどうすればいいのか、ただ教えてくれればいい」
現代の日本において、これはかなり真実味があります。しかし、まず第一に看護スタッフを初めとして、皆さんの院長は学際的多職種連携を積極的に支持していると私は認識しています。さもなければ、なぜ今日ここに私と皆さんが集っているのでしょうか。看護スタッフは医師だけではなく、他の職種と同等に参加し、患者の集中治療サービスの短縮に努めることができるのです。患者にもよりますが、痴呆が重く高齢で虚弱な方などは細心の管理が必要でしょう。しかし24時間入院以外の方法もあるかもしれません。
 私は実際に何度も体験しているので確信しているのですが、相互の意思決定を含む連携の機会には、看護スタッフは他職種と共にすばらしい働きするのです。

3,  「これ以上、何かをするには、人材(看護スタッフ)が足りない」
 看護に限らず、他の専門職も同じように訴えます。確かに、わずかながらも真実でしょうが、単なる思い込みの神話にすぎないかもしれません。看護スタッフにとって、看護哲学や患者ケアにおいて明確にされていることがあります。それは、病院外での生活ができるよう援助すること、もしくは、治療が軽減された生活ができるようになることです。すでに看護におけるセルフケアのモデルは述べました。通常通りの業務をこなすといった今までとは違い、自らの時間、技能、そして資源を、革新的に駆使しなければならないということです。どこでもっと時間を作るのかーそれは不必要や無駄な動きを省き、可能な限り様々な活動を合同し、すでにある資源の利用に想像力を用いて、もっと能率のよいコミュニケーションを取ることです。必ずしも歓迎されませんでしたが、アメリカではあるスローガンが唄われました。「Domorewithless-限られた中で、より多くのものを/さらなる削減」というものです。日本のニュースが正確であれば、皆さんも同じように少ないなからも多くのことに取り組まなくてはなりません。経済不況は徐々に回復の兆しをみせていますが、資金不足の状態は長いこと続くでしょう。同じく、看護スタッフも経費と費用効果を考える必要があり、それは看護スタッフが病棟において最も大きな役割を果たし、入院治療は高額で、しかも一般的に、看護スタッフが給料の大半を占めるからです(高給なのではなく総額で占める割合)。

4,  「看護スタッフは地位や権限がないので、誰も私たちの声に耳を傾けず理解しない」
看護スタッフはヘルスケアの領域において、自らの能力を過小評価しすぎていると思います。おそらく女性としてのジェンダーの問題や、看護という職業に関して不適切な社会的認知が原因として考えられます。
 「名声(評判)を得て、正々堂々と行動せよ」という諺があります。私たち看護スタッフが自分達は弱く、無能で依存的であると信じるならば、そのとおりの行動をとることでしょう。しかし、逆に看護スタッフは強く、尊敬され独立していると信じるならば、確固たる行動がとれるのです。細木ユニティ病院の看護スタッフの皆さんは、正しい名声を得て、力強く正々堂々と行動できるものと期待しております。

 これまでに私が述べなかった、皆さんの神話のような、お決まりの思い込みはあることでしょうが、十分に明らかにできたのではないかと思います。こういったものを言い逃れに利用して学際的多職種連携に反対したり支持しなかったり、ましてや、患者ケアのための連携システムを実行したいと思う人々を妨害するなどということは決してなさらないでください。この冒険的研究チームを代表して、皆さんのご協力とご支援をおねがいいたします。ここにいる皆様方が、私たちに示唆し、教えてくれるものと信頼しております。
 最後に、中国看護協会の前会長、リン・ユ・イン先生のお言葉を引用させていただき終わりにいたします。

「決して完全に熟した時などありません。ですから今から始めましょう」