精神病院における学際的多職種連携について


細木ユニティ病院 野島昭代(PSW), 坂要一郎(Dr)
中屋公子(Ns), 木戸晶(CP)
小川泰子(PSW), 安岡健作(OT)
川崎医療福祉大学 保健看護学科 谷岡哲也(Ns), ベティ・フルタ(Ns)
福井県立大学 社会福祉学科 真野元四郎(PSW)


◆ はじめに ◆

 学際的多職種連携(またはチーム医療)とは、医療や福祉の現場で働く各職種が協力し合い、患者の症状を総合的に把握・理解すること、それに基き適切かつ迅速なアプローチを可能にすること、社会復帰をスムースにできるよう環境を整備・調整することを意味する。欧米先進国ではすでにその効果が地域に広がり患者のノーマライゼーションを推進するコミュニティケア・システムとして認識されている。医療法で人員配置が制限されている精神科にとって、患者のノーマライゼーションおよび効率的医療のためには各職種の連携は特に必要となる。当院では2000年4月より、精神科ケアにおける学際的連携モデルの作成及び評価を目的としたパイロット研究の臨床現場として学際的連携へのプロジェクトに取り組んでいる。


◆ 細木ユニティ病院の内容 ◆

 当院は、1996年総合病院から分離独立した病院で、ベッド数271の中、現在内科40、精神科16を休床とし、現在、精神科・神経科215床で運営している。
 平成13年5月末現在、外来実患者数は月平均24.7人で 平均在院日数は227.5日(図1参照)で 病床利用率は84%(図2参照)となっている。 そういった背景の中、チーム医療に取り組んでいる。


◆ スタッフ ◆ 【144.2名】
医師 6、 看護婦(士) 72.2、 介護福祉士 6、 看護助手 24
臨床心理士 3
ソーシャルワーカー 5
作業療法士 2、 作業療法助手 1
音楽療法士 1
薬剤師 2
検査技師 1
栄養士 3、 調理士
医事 3、 総務 3、 秘書 1(施設、用度)
非常勤講師(陶芸 1、絵画 1、音楽 2、書道 1、茶道 1、機織り 1、手工芸 2)

◆ 当院におけるチーム医療への取り組みの内容 ◆
1)  精神科患者の社会復帰に貢献し、注目されているアメリカのミシガン大学及び、
 大学病院での視察を行い学際的連携モデルの基礎づくりを行った
2)  病棟での申送りへの多職種参加、カンファレンスの推進
3)  月一度の定期的なチーム医療会議の開催(会議のメンバーはソーシャルワーカー、
 臨床心理士、病棟婦長、総婦長、医師、医事課、総務課、薬剤室、栄養課、
 川崎医療福祉大学看護学講師の計30名)
4)  外部講師を招いて、チーム医療における各職種の役割と必要性の講演開催(図3参照
5)  病棟単位でのチーム医療会議の開催
6)  チームワークを向上させる取り組みとして、各専門職の仕事の内容について
 説明会を開催(図4参照
7)  患者中心のグループ・ミーティング
8)  開かれた病院作りの一環として、病院ホールを地域の少女合唱団の
 練習場所として無料で提供

 このプロジェクトに着手してから半年後の、2000年10月、病院職員全体を対象とした意識調査を行った。
その結果、この取り組みを知っていても、内容・意義についての理解が不十分であることが分かった。
しかし、このアンケート調査自体が啓発となり、連携の必要性を職員に意識付け、一層浸透させる効果があったと思われた。 更に2001年1月より、チーム医療会議に全病棟・全職種から参加することとなり、会議を通して得られる情報を全職員に迅速かつ、より明確に伝えることが可能となった。
 そういった中、プロジェクトに着手してから、約1年後に当たる、2001年3月に2回目のアンケート調査を行った。今回はその内容も併せて報告する。


◆ 意識調査の結果 ◆

 アンケートは全職員に配布され、121名より回収することができ、回収率は90%だった。前回は125名から回収することができ回収率は91%。これは当院のチーム医療への取り組みの浸透度を示している。 調査結果の各比率について、前回の調査結果と比較・検討した結果、検定では有意差は見られなかった。 しかし、「当院でのチーム医療の取り組みを知っていますか」という問いに対して、前回は72%の職員が理解していたのに対し、今回は82%と上昇していることが分かった(図5参照)。会議の内容についても前回より理解している職員が多くなっていることが分かりました。これは、チーム医療会議に出席をしているメンバーが会議の内容を明確に伝えていると考える。この取り組みが職員により浸透したことをあらわしている。更に、病棟でのチーム医療会議開催については62%(前回55%)(図6参照)、多職種の申し送り参加については82%(前回71%)(図7参照)など、職員への浸透度はそれぞれ上昇していた。 しかし、比較をしてみると「病棟に他職種が入る機会が増えましたか」の問いでは全くそう思うの回答が前回35%から今回16%と大幅に伸び率が下降していることが分かった(図8参照)。



◆ 考察 ◆

 チーム医療の浸透度は上昇していることから、職員の意識は確実に変化していると考えることができた。
しかし、チーム医療という取り組みは知っていても、チーム医療を意識しての連携は始まったばかりだと考える。 今までのように医師が全ての面で指示し、他職種のものは指示されるという固定観念から離れること、そして各専門職がパートナーとして相互に信頼関係を持ち、率直に意見を交わすことの出来る職場環境づくりがチーム医療の基礎となる。

 今後の課題として地域における精神障害者のノーマライゼイションに向けて、病院と地域での学際的連携の取り組みについて、様々な検討が必要となる。 地域に開かれた病院作りや、長期入院患者さんを地域に帰して行くことを目標にチーム医療を推進していきたいと考えている。